今年は江戸幕府が二百六十六年という光輝ある歴史の幕を閉じてから百四十年目を迎えますが、この間における徳川幕臣と子孫が嘗めた労苦と忍従は筆舌につくしがたいものがあります。しかし、反面では多くの逸材を輩出し、近代日本の発展に目覚ましい功績を残しました。また、有志によっていくつかの団体が結成され、徳川宗家を中心に親交の火を燈し続けてまいりました。
 ところが、今次大戦を境として子孫相互の交流はもとより、その消息すらも途絶えてしまったことは誠に痛恨の極みといわざるを得ません。そこで、私ども下名の者たちが相語らい有志の御賛同を得て「柳営会」と名付け幕臣子孫の会を結成したものであります。周知のごとく我々の祖先は松平家累代に弓馬をもって仕え、殊に東照神君の御幼少の頃より多くの辛酸をともにし、幾多の戦陣に臨みました。江戸二百六十余年という我が国史上類例のない泰平の時代はこのような祖先の長い苦難の歴史の上に築かれたといっても過言ではありません。また幕府開闢以来、常に柳営にあって歴代将軍家に仕え、さまざまな分野で幕政を支え、政治・経済・文化等に多大な功績を残しました。今日の日本の繁栄はこのような基板の上に成り立っていることは衆目の認めるところであります。すなわち、我々の祖先の歴史は日本の近代史そのものといえます。
 私どもはこのような祖先の功業遺徳を単に過去の郷愁にとどめることなく、永く子孫に伝え、未来に役立てることが責務と考えます。幸い、旧幕臣の子孫は現在、さまざまな分野で活躍され、実に多士済々であります。そこで、徳川宗家を中心に、これらの力を結集し、少しでも現在社会に寄与するとともに、英知をもって新しい歴史の一ページを創造できれば幸甚と存じます。
 なにとぞ趣意に御賛同の上御入会下さるよう、御案内申し上げます。

 昭和五十六年九月一日

柳営会会長      竹本 正尚
同副会長       間宮 丈夫
同常務理事事務局長  松平 千秋
同常務理事      榊原 俊行
同常務理事      坪井 三郎
同常務理事      根来  實
同常務理事      松平 輝夫
同常務理事      間宮  務
同常務理事      森  慶治